大河よりおもしろかった続編

 「新選組!! 土方歳三最期の一日」を見た。
 これほど完成された正月時代劇がかつてあっただろうか。もちろん、大河ドラマで一年間やったあとの続編である分、余計な説明を省けたというアドバンテージはある。そして、その一年間を効果的に活用できるのも利点であろう。だが、連続ドラマの続編でありがちな不自然な設定はまったく見られず(榎本武揚の配役変更にはほっとした)、実にうまく三谷幸喜流がふんだんに盛り込まれていた。
 一番おもしろかったのは、吹越満演じる大鳥圭介の位置づけだった。前半では吹越氏らしく、裏返った声で「ひーじーかたーくん」と幕府の官僚っぽくいやみったらしく応対する。、しかし榎本が決めた降伏という決断に誰よりも悔しがっていることを土方に見抜かれ意気投合。ところが、官軍の奇襲に遭い、土方が撃たれた報を聞いて狼狽し、それまで丁寧に配置していた陣割り用のジオラマをぶちこわして悔しがる姿、すごい演技だった。
 片岡愛之助演じる榎本武揚もよかった。上方歌舞伎の人だそうだが、江戸弁が実にいい。土方とワイン片手に差しで語り、反発する土方をじわりじわり懐柔していく場面は実に見応えがあった。
 そして土方役の山本耕史氏。もう何も言うことはない。個人的にこれほどかっこいいと思った若手俳優は近年いない(山川・・・ry)。最初の場面、「待たせたな」と颯爽と現れるシーン。もうガッチリ心をわしづかみ。もはや土方歳三山本耕史である。最後、撃たれて死ぬ場面、思いの外あっけないと批判の向きもあるかもしれないが、下手にくどくなく、土方らしい死に方だったと思う。ただ、香取慎吾をあそこで出さなくてもよかったような・・・。

 それにしても三谷先生、やれ「桶狭間」だの「ひよどりごえ」だの、しっかり去年と今年の大河ドラマをにらんだ絡ませ方がにくい。