PS3発売 一番喜んでいるのは誰だ

 プレイステーション3が発売された。そしてあっという間に売り切れた。当然、私は買っていない。しばらく買うつもりもない。故に、早々に手に入れた人たちをうらやましいとも憎たらしいとも思わない。だが、今回のソニーのやり方には少なからぬ腹立たしさを禁じ得ない。いや、むしろ哀れみさえ感じる。
 複数の報道を見ると、初日のPS3の出荷台数はわずか8万台といわれている。当初から初回出荷は少なくなると見られてはいたが、先代PS2の初回でさえ少ないと言われながら100万台出荷した実績を考えれば、あまりにも少ない。しかも、当初予定していた欧州での発売を来年に先のべ下上でそろえた数がたった8万台というのは、ソニーにとって致命的だ。想像するに、ソニー社内にも発売延期を促す声があったのではないだろうか。その上で、予定通りの発売という信用維持を優先するという判断を下したのではないだろうか。だとすれば、その判断は、ソニーに本当にプラスに働いたのだろうか。
 一部の報道やネットでの情報、ネットオークションの動向などを見ると、初回分を買い求める行列には、純粋に真っ先に新しいゲームを楽しみたいというファンよりも、転売目的のいわゆるプロの方が多く潜んでいたと言われている。ある売り場では転売屋の元締めが、雇った中国人を複数並ばせてその場で露骨に支持をしていたとの報道もある。ちなみに、ビックカメラ有楽町本館でソニー・コンピュータ・エンタテインメントの久夛良木健社長が直接PS3を手渡した一番乗りの客は中国人留学生だったそうだ。PS3は買いグレードでも49,980円。中国人の平均月収2.5カ月分である。
 このような現状を、ソニーはどこまで想定していただろうか。それはソニーに益をもたらしたのだろうか。発売初日の翌12日、秋葉原のゲームソフト専門店には、明らかにその店で売った本体より多い数の「リッジレーサー7」のパッケージが山積みにされていたのがやけに気になった。果たして今回の発売を一番喜んでいるのは誰なのだろうか。
 今週17日には北米でも発売されるPS3だが、もうすでに行列ができている店もあるという。ソニーは3月までに全世界で600万台を売り上げる目標を掲げているが、果たして本当に達成できるのだろうか。たとえ目標をクリアしても今期決算が赤字になることは、当のソニーも織り込み済みだ。まさに行くも地獄、とどまるも地獄のソニー。いつも強気の笑顔を絶やさぬ久夛良木しが、真に笑えるのはいつになるのだろう。