浦和で生まれてよかった!

 自分の生まれ故郷が、その街であったことをこれほど幸せに感じた年はない。そしてきょうほどそれを強く感じた日はない。その故郷、浦和の街はまさに歓喜の渦に包まれた。
 2003年の阪神タイガース優勝の際の心斎橋界隈の賑わいなどはテレビを通じてさんざ見てきたが、それを実体験できるチャンスがついに巡ってきたのである。レッズサポーターの聖地というべき居酒屋「力」の前に着いたのはキックオフの5分ほど前。当然だが、店内はすでに満員。それを囲むようにマスコミのテレビカメラが数台。店からあふれた私を含むギャラリーは、店頭の薄型テレビを昭和30年代の街頭テレビ宜しく、立ったまま見る羽目になった。とりあえずビール片手に観戦モードに。
 試合序盤はレッズサイドの動きが堅く、ややガンバに押され気味。すったもんだしている間に前半早々に1点献上。周囲はいや〜なムードに。この試合、ガンバに3点差以上つけられさえしなければレッズの優勝は決まるが、負けて優勝決定というのではさすがにさまにならない。そんな中での早い時間帯の失点は、最悪な展開を予感させた。
 そんな思いムードを断ち切ったのはその7分後、ポンテの同点ゴールだった。そして前半終了間際、ワシントンの逆転ゴールが決まると、はじけんばかりの歓声が沸き上がった。気付けば周囲な黒山ならぬ「赤山」の人だかり。ハーフタイムの間にどんどん集まってきた。
 そして後半、闘莉王を軸にした鉄壁の守備がさえ渡る中、ワシントンの2点目のゴールが決まりチェックメイト。すがるガンバの反抗を1点に抑え、いよいよ試合時間はインジャリータイムに。最高潮に達したスタジアムも居酒屋も、聞き取れないレフェリーの長い笛を吹く仕草を確認すると、もう周囲はひっちゃかめっちゃか。居酒屋の前の狭い道は赤い服を着た人間で埋まり、埼玉県警も大量動員。シャンパンシャワーやらビールかけやら振る舞い酒やら。「うらーわれっず」のコールは鳴りやまぬことなく街中に鳴り響き、商店街は早々に優勝記念セールモードに。
浦和駅前まで歩いていくと、ここもまた赤い群衆が、新聞の号外が配られるのを今や遅しと待ちかまえていた。ようやく届いた号外の束は、あっという間に捌けた。
 私は号外を1枚手に取ったところで早々に(実家に立ち寄ることもなく)五反野の家に帰ったが、浦和の喧噪はおそらく朝までつつくのだろう。何しろ、我々は12年待ったのだ。もう少し騒いでも何のはばかることやあらん。