覇者の驕り

 発表即日に予約したiPod touchが昨日、手元に届いた。喜び勇んで箱を開けて電源を入れ、USBでPCにつないでiTunesを起動、同期を済まして、ご自慢のタッチパネルを操作しようとしたその時、事件は起こった!
 iPhoneと同じような、愛らしいアイコンが並んだ画面をちょこちょこいじっているうちに、画面が止まった。USBを差し込んでiTunesにつなげと指示する絵が映ったまま、何もできなくなってしまった。指示通りつなげて、再度同期をやってみてもパネルは全く変わらないまま。説明書は舌足らずの文章が並ぶだけで役に立たず。
 初期不良か、と思い、まずアップルのサイトにアクセスしてみるも、くだんの症状に関する説明は一切なし。続いて2ちゃんねるのポータブルAV機器板を覗いてみると「iPodtouch win族\(^o^)/」なるスレをトップ項目に発見。中を見ると、自分と同じ症状を訴える着込みが書き込まれまくっていた。どうやらWindowsユーザー全員が食らっている症状であることが判明。一方でMacユーザーどもは何ら不自由なくパネルの操作がさくさくできている模様。つまり「おまいら、Macぐらい買えよボケカス」(ジョブズ談)ということらしい。
 しばらくどうスレッドを読んでいるとCnetの以下ののようなニュースを発見。

iPod touch、商品到着と同時にWinユーザーから不具合報告多数--「確認できていない」とアップル 鳴海淳義(編集部)2007/09/23 17:14
 iPod touchが9月22日より順次出荷開始され、翌23日午前には多くのユーザーの手元に届き始めた。だが、商品の到着を喜ぶのもつかの間、Windowsユーザーからは不具合報告が相次いでいる。なんと、iPod touchが一切操作を受け付けないという。
 まずiPod touchに電源を入れると、USBケーブルを使ってiPod touchとPCを接続するように画面上で指示される。iTunesiPod touchを認識しており、楽曲や動画などの同期も行えるが、iPod touch側はPCとの接続を促す画像を表示したまま一切の操作を受け付けなくなってしまう。
 唯一できるのは、筐体左上にあるスリープボタンから電源を切ることくらいだ。もちろん再度電源をオンにしても、画面上ではiPod touchとPCを接続するように指示されるだけで、他のメニューなどは開けない。Windowsユーザーにとって、現在のところiPod touchは使い物にならない。
 ただ、この症状はWindowsユーザーだけにしか見られない。Macユーザーは通常通りに利用できている。一体、何が起きているのだろうか。
 いずれはiTunesのアップデートによりこの不具合は解消されるだろう。しかし不思議なのは、どうしてこのような問題が起こったか、である。アップルにWindowsマシンが一台でもあれば、すぐに確認できたはずなのだ。

 この件について、アップルからのコメントは得られていない。また、サポートセンターにも電話がつながらない状況が続いている。

追記(9月23日22時56分)
 上記の記事発表後、アップルジャパンからの要請により記事の一部を削除した。以下、アップルジャパンから得たコメントを掲載する。
 アップルジャパンによれば、記事中「iPod touchには出荷段階からロックが掛かっており、これを解除するには一度Macに接続する必要があるという」と記載した部分は、同社の公式見解ではないため、必ずしも対策として正しいとは限らないとしている。
 また、ヨドバシAkiba 2階のAppleコーナーで行われていたiPod touchのロック解除は、ヨドバシとしての公式対応ではなく、すでに対応を中止したとのこと。おそらく突発的な善意のサポートの一部だったということだ。
 アップルジャパンは、iPod touchWindows環境で動作しないという現象について「不具合であると確認できていない」としており、現在も確認作業を進めている最中だという。そのため、すでに手元にiPod touchを持つユーザーに対して、今後どのようなサポートを行っていくかも決まっていない。Apple Storeでの対応予定、店頭販売のスケジュールへの影響なども不明のままだ。

http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20356999,00.htm
 この記事の内容全体としては自分の体験と同様なので、世間でも認知されているということを確認するにとどまるものなのだが、いちばん問題なのは、追記以降のアップルのコメント「不具合であると確認できていない」というくだり。この一言は、あるいはアップルにとって致命傷になりかねないセリフである。
 かつてマイクロソフトが初代Xboxを発売した折、ゲームディスクに傷が付くという欠陥を「仕様だ」と突っぱねた一件を思い出す。Xboxが360になっても未だに日本で苦戦している重い足かせとなっている原因がこの事件だった。ウィンドウズでの成功をバックにしたマイクロソフトの、いわば「覇者の驕り」がにじみ出た失態といえた。
 アップルの、この誠実さのかけらもないことを示す一言も、ウォークマンを蹴散らし向かう所敵なしとなった現状にあぐらをかこうとする「覇者の驕り」の現れと感じずにいられない。世間の信頼は、砂上の楼閣のごとく瞬時に崩れることを、アップルは直ちに認識しなければ、取り返しのつかない事態に直面することになろう。

 ちなみに手元のiPodtouchだが、その後2chの親切な書き込みから、Windows Vistaを英語版に切り替えて、再度接続することで問題は解決。指タッチには若干の慣れが必要なようだが操作感は問題なし。vistaをアルティメットにしておいて本当によかったと、9カ月目にしてしみじみ感じて床についた、わが41回目の誕生日だった。