あふれる昭和

 日本人はよほど「昭和」が好きらしい。むろん、私も含めて。いま、本屋に行くと昭和30年代頃の日本を撮影した写真集をはじめ、続編が公開間近い「三丁目の夕日」がらみの本とか、昭和、しかも戦後以降に絡んだ出版物があふれている。そんな山の中から手にとって衝動買いしたのか、いわゆる「ディアゴスティーニ雑誌」の最新シリーズ「昭和タイムズ」だ。
 1冊ごとに1年分の出来事、流行などを日めくり形式で紹介していくというスタイルで、全64巻。創刊1冊目は昭和39年。東京オリンピック東海道新幹線開業という、戦後の日本の転換点となった年であり、この手の時代物に興味を持つ人が取っつきやすい年ともいえる。誰もが知る歴史的イベントだけでなく、地方紙の縮刷版あたりから拾ってきたと思われる3面記事なども細かくカバーしているなど、昭和ファンを満足させる要素は充実している。若い人にとってはおそらく、高島忠夫の息子は実は3人いた事実に衝撃を覚えるだろう。
 ただ、かつて講談社が似たようなコンセプトで出していた「週刊日録20世紀」(こちらは番外編と併せて120冊あった)のほうが、ボリュームもあり中身も濃く、それに比べると物足りなさを感じる。大衆文化に特化した作りは、それはそれで有意義だと思うが、もう少し、好き者をうならせる一押しが欲しいところだ。