「ちりとてちん」 演出家に脱帽

 今日18日の連続テレビ小説(朝ドラといってはいけないらしい)「ちりとてちん」、昼の再放送までにBSを含め3回見た。いつものことだが。
 で、内容はというと、B子こと喜代美の親友・順子が、同じく友達のA子こと清美の兄で塗り箸製作所のの一人息子・友晴の子を妊んだことが発覚し、二人の親同士の話し合いの場をB子の母・糸子がセッティングする。そしてその場に居合わせた3家の面々が発言していくという展開。
 で、3回目の放送を見ているうちに気がついた。15分の放送時間で、場面は終始B子の実家の居間。そして、見た限りでの判断だが、全編ノーカットの連取り芝居。わずか15分のドラマでこれをやってしまう演出家には頭が下がる。
 その演出が相乗効果となっているのか、ここの役者の演技も光るものがあった。ダメヒロイン・B子が、普段は励まされているというか自分の背中を押してくれていた順子(2chなどネット界隈では「C子」とか「鯖子」などと呼ばれているが)に、立場逆転の背中を押す言葉を投げかけるセリフの切れは実に見事。そして最後の最後、順子の父親・幸助の「喧嘩はすな、仲良くせい」という短い一言。撮影現場の緊迫感が生み出した名台詞だった。今週前半で出てきた、喧嘩の仲裁好きな男を扱った落語「胴乱の幸助」の伏線をきれいに生かし切っていた。
 ノーカットの連取り芝居で思い起こすのは、30年近く前の「3年B組金八先生2」の伝説の1話「卒業式前の暴力2」における、金八ほか教師をはじめとする大人たちが警察の会議室で、逮捕された生徒たちの扱いを巡り意見を戦わせるシーン。こちらは45分間の番組で約20分、先にCMを多めにやったあとで一気に流したというパターンだが、きょうの「ちりとてちん」の演出の人はこのドラマの影響を受けているように思えるフシがある。
 特に、まず周りの脇役の人々が一通り発言し、意見を戦わし、その間主人公はあえて控えめに、最小限のセリフを言う程度にとどめ、後半になって、満を持して決め台詞を言って場を締めるという展開は非常によく似ている。
 パクリを批判しているのではない。いいものはいいと言いたいのだ。
 まさに焼鯖のごとく脂ののってきた「ちりとてちん」の今後がますます楽しみだ。
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