ニンテンドーDSの野望
わたしの脳年齢はきょう現在、35歳前後である。
そう、ニンテンドーDSのゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の成果である。
漢字書き取りや反射神経を鍛える計算など、ゲームの内容としてはRPGやアクションものに比べて地味だが、その単純さがやみつきにさせる。松嶋菜々子のCMに惹かれてつい買ってしまったのだが、いまではこれをやらないと1日が始まらない生活になっている。そんな魅力が奏功してか、100万本を超えるベストセラーとなり、昨年末に出た続編もまた売り切れ続出の状況のようだ。
意外なところから生まれたキラータイトルのおかげで、ニンテンドーDSは今、もっとも売れまくっているゲームハードという地位を勝ち取るに至っている。
いったい1年前、この状況を誰が予想しえたであろうか。ちょうど1年前、携帯ゲーム市場を席巻していたのはソニーのPSPである。秋葉原のどの店に行っても売り切れ。公式サイトでの直販も、予約受付から10秒足らずでソルドアウトという状態が発売日から2カ月ほど続いていた。一方で、先行して発売したDSはどの店に行っても山積みという状態。海外ではDSの売れ行きは好調だったが、国内では「ソニー神話」の前に辛酸をなめていた。だが、買う側も次第に気づき始めた。PSPを買わなければと思わせるほどのキラータイトルがなかなか現れてこないことに。
その一方で任天堂は、これまであまりゲームに関心を持たなかった40代以上のオヤジ世代を狙った販売戦略を打ち出し、品薄が続くPSPを横目にじわりじわりとシェア拡大を遂げていったのである。
考えてみれば、PSPによって初めて携帯ゲーム市場に参入したソニーとは違い、1980年代初頭に発売したゲームウォッチから、四半世紀の歴史を持つ任天堂には比べようもない蓄積があるわけで、「大人のDSトレーニング」のような単純なゲームをミリオンセラーに仕立て上げるのは必然ともいえるのである。
そんな任天堂が二の矢を放った。