てっぱく デゴイチ運転台への道は険し

 久々に平日に休暇を取れたので、先日見事に門前払いを食らった鉄道博物館(以下てっぱく)にリトライしてきた。
 さすがにきょうはすいていようと、思いつつも一抹の不安から開館15分前にニューシャトル鉄道博物館(大成)駅に到着したのだが、ゲート前にはすでにけっこうな列が。どうやらこの鉄道ブーム、ホンモノなのかもしれない。
 10時になり、列が動き始め、Suicaの入場登録機へ。機械の反応が鈍いようで少々つっかえる。その微妙な待ち時間が、大きな後悔につながることがその直後に知らされることとなった。ゲートを通ると、各種アトラクションの予約を取る仕組みになっていて、きょう、もっとも楽しみにしていたD51運転シミュレーターの予約を取ろうとすると午前分の受付の列はすでに早くも札止め。1日限定32人という狭き門ではあるとはいえ、これは相当高いハードルとなってしばらく私の中に立ちはだかることになりそうだ。
 このD51のほかにも、ミニ電車の運転体験などアトラクションは各種あるが、どれも行列だらけ。しかも小学生とおぼしき子供連れノシ型もちらほら。きょうは木曜日のはずだが・・・。開校記念日の集中日なのだろうか、どこぞの県の県民の日とかなのだろうか、それともこれがゆとり教育の実態というやつなのだろうか。

 ということで、アトラクションはあきらめ、「C57 135」のプレートが待ち受ける1Fの車両展示ブースへ。まずは交通博物館の時と同様始まりの車両は1号機関車である。そしてその隣には弁慶号、後方には善光号。まるで新居に引っ越した旧友に迎えられるような気分だ。さらにその奥には転車台に乗ったC57 135に9856マレー式と、広々とした新居に心躍っているかのような旧交通博物館組の機関車群が集まる。
 右手壁際には久々のお披露目となったものも含めた歴代の御料車が。国宝級である手前、展示車両はほかと違ってガラスの向こう。まさにアンタッチャブルの菊の御紋という訳か。
 左側の壁際には特急燕のマイテ39とオハ31といった旧客車と、つい最近まで現役だったクモハ40。クモハ40とオハ31は車内に入れる。オハ31三等車の座席に何気なく座ってみると、板張りの背もたれが痛い。薄暗い明かりに照らされた通路には「次の停車駅はアンドロメダ」などという黒い車掌のアナウンスが聞こえてきそうな、向かいの席には黒ずくめの長い髪の女性が座っていそうなムードを醸し出す。
 太古の車両群のその奥に歩を進めると、今度は古き良き昭和の世界。
 まずEF58 89。ひさし付きゴハチ最後の生き残りであり、私が高校時代、茶色く再塗装された同機を毎日16時30分過ぎに我が家のすぐ裏の東北線の線路を下っていく姿を撮りまくった、“古き良き友”である。こうして静かなる余生を過ごす場を与えられたことに、小さな喜びを覚える。
 その後ろには「あさかぜ」のヘッドマークを携えたナハネフ22。各一般マスコミでは「昭和33年に登場した“動くホテル”」と説明されているが、このナハネフ22が登場するのはもっと後年であることは鉄道ファンの常識中の常識である。願わくば、ここにはナロネ20があるべきなのだろうが・・・。
 ナハネフ22の隣にはクハ181。ホームを挟む形で「とき」と「あさかぜ」が並んでいる風景はまさに夢の一場面か。その後方にはクモハ90(もちろん表記はクモハ101 902)。車内に入れたおかげで運転台を仕切る窓の形状が量産型の101系と異なっていることを始めて知った。
 クハ181の隣はクモハ455、クハ481、ED75と仙台界隈に縁のある車両が固まっていて、車内では弁当を広げて食べることも可能。クハ181も含め昭和40年代の上野駅を模した演出をしており、すぐそばには昭和な制服姿の駅弁売りの女性の姿も。
 その上野駅コーナーの裏手は新幹線コーナーで、初期の東北新幹線色の222型と、旧交通博物館組の0系輪切り。さらに東海道新幹線開通当時の新聞記事や子供向けに発売されたおもちゃや絵本、さらに確か自分でも使った記憶のある、デパートのレストランなどで使われたおこさまランチ用プレートなどが展示してあって郷愁を誘う。
 そしてブース左奥にはEF66 11牽引のコンテナ貨物とフレートライナー。「とびうお」の名札を見つけて、思わず膝を打ってしまった。

 ヒストリーゾーンを一通り見終えて、今度はエスカレーターで2階へ。2階にはもう一つのメインディッシュ、HOゲージのジオラマ運転場がある。これもほかのアトラクションと同様、見物時間を予約する仕組みのはずなのだが、諸般の事情からか、開始直前に列に並べば入れるようになっていた。で、12時30分からの回に並ぶことにしたが、あっという間にものすごい列。本当にきょうは平日だったのだろうか。
 開始10分前に入場し着席。目の前に広がったワンダーランドは、交通博物館の時の物よりざっと1.5倍はある感じ。係のおねえさんの解説(最近はおねえさんがやるんですね)によれば25メートルプール4コース分とか。まさに夢空間である。走行する車両はというと、交通博物館の末期の頃とさほどかわらない。しいてあげれば「ばんえつ物語号」(C57 1なんだけど、それでいいのか?)が加わったくらいか。1回の上演は15分間。齧り付きの最前席は小学生未満のお子様専用ブース。子供にとっては天国のはずだが、黙って座れている子供などいるはずがないわけで、、、。

 建物の外、中庭はミニ電車の運転体験ゾーン。すぐ横を川越線高崎線のホンモノの線路が通っているところがかえって一体感が出るというか、子供にはたまらない空間だろう(もちろん大きな子供も含め)。
 このほか、開館記念の新幹線関連の特別展示など見所は事欠かずあっという間に4時間が経過。これだけの内容で入場料1000円というのは安い(もっとも交通博物館は300円だったが)。年が明けてもう少しすくようになったらまた来ようと思うが、リピーターを増やすにはもうひとひねりアイデアが必要とも思う。