狙われた街の40年後

 どこからともなく現れた巨大な怪獣や宇宙人が街を破壊する。そこに我らがヒーローがやってきて悪い怪獣を退治し、事件が解決する。特撮ヒーローもの、とりわけウルトラシリーズの基本パターンであり、そんなワンパターンに昭和のこどもたちは夢中になっていた。
 そのワンパターンになれていた私に、強烈な印象を与えたのがウルトラセブンの第8話「狙われた街」だ。
 どこにもある平凡な街・北川町で、一般市民が突然凶暴化して銃を乱射したり、自動車事故を起こしたりする事件が相次いで起こる。原因は街の駅前の自販機で売られていたタバコに麻薬成分が含まれていたためだった。それをモロボシ・ダンらウルトラ警備隊突き止めていくのだが、ここまでは怪獣ものというより刑事ドラマのような内容だ。
 結局、麻薬タバコを仕込んだのは宇宙人・メトロン星人の陰謀だったことがわかるのだが、ダンが突き止めたメトロン星人がいたのはボロアパートの6畳一間の萎びた部屋。ちゃぶ台を挟んで語らうメトロン星人の口から出てきた言葉は、人間の信頼関係を断ち切ってしまえば、巨大化して暴れ回らなくても簡単に地球を侵略できる、というもの。最後は巨大化してウルトラセブンに「倒されて」終わるわけだが、締めのこのナレーションが印象的だった。
 「ご安心ください。これははるか未来のお話です。なぜって?今の人間はそれほど他人を信頼していませんから」

 さて、今週のウルトラマンマックスである。サブタイトルは「狙われない街」、実相寺再び、である(先々週からという意味も含め)。

 舞台はあれから40年後、現代の北川町。普段おとなしい市民が突然暴れ出すという事件が頻発。40年前とよく似た現象だ。実際、「40年前にも北川町でよく似た事件があったそうだ」というセリフが出てくる。だが、今回の原因はタバコではなく、特殊な電波を受信する携帯電話。そして、犯人は40年前ウルトラセブンに「倒された」はずのメトロン星人(演じるは寺田農)。40年前、戦いで深傷を負ったメトロン星人は、アパートの近所の人(お医者さん?)に助けられ、そのごも同じアパートで静かに過ごしていた。

 その後時は流れ、人間は他人を信頼するどころか、礼儀を忘れ、環境を破壊し、ところかまわず大声で携帯電話を使いまくる世の中になり、メトロン星人は地球を侵略するどころかあきれ果て、地球を去るついでに、ひと悪さ仕掛けたのが今回の事件、というお話。

 40年前、図らずも実相寺監督が語った皮肉は、全く反対の方向に流れていってしまったということだろう。

 今回のラストシーンで、子供の頃からメトロン星人と友達で事件を追っていた中年の刑事(六平直政、今回は役者が豪華)が、地球を去っていったメトロン星人「おれも連れて行って欲しかったな」と語ったひと言。そして最後の最後、メトロン星人の感慨に同情しかけたカイト隊員に「でも・・・」で途切れたミズキ隊員のセリフ。夢の果てに失望した中年と、それでも未来に失望したくない若者。40年という時の流れを見事に表現した秀逸の作品だ。