実相寺の遺産 怪奇大作戦セカンドファイル

 NHK・BSハイビジョンで放映中の「怪奇大作戦セカンドファイル」が面白い。特に9日放送の第2話「昭和幻燈小路」は、昨年他界した奇才・実相寺昭雄が脚本を手がけた文字通りの遺作であり、その遺志が見事に受け継がれた傑作だった。
 東京のとある下町が、突然町ごと昭和30年代の世界になってしまい、町の外の現実世界と断絶してしまう。その怪奇現象に巻き込まれたSRIの面々が、原因追及に挑むというのが、大まかな内容。
 ハイビジョン映像ながら、画面はセピア色に変わり、電気屋の前の街頭テレビに人々が群がり、ちんちん電車が走る音がどこからともなく聞こえてくる。この、ちんちん電車を出してくるところが、鉄道好きとしても知られる実相寺氏のこだわりだろう。
 途中、西島秀俊扮するSRIの牧史郎(かつては岸田森が演じていたが、これはこれで悪くない)が、突如父親との思い出を呼び起こし、「玉のみやいは丸の内  近き日比谷に集まれる 電車の道は十文字  まず上野へと遊ばんか 」という、電車唱歌を歌うシーンは、おそらく実相寺氏本人の思い出と重なっているのだろう。実際、電車唱歌については、実相寺氏の自伝「ウルトラマンの東京」の中でも触れられている。
 「クレヨンしんちゃん モーレツオトナ帝国の逆襲」の中にも、しんのすけのパパが父親のことを思い出して泣くという、これに似たようなシーンことを思い出したが、不覚にもジーンと来てしまった。
 そしてラストのカット、あれはまさしく旧作の「京都買います」のオマージュだろう。それに気づくことができた自分がうれしかった。
 旧作の「怪奇大作戦」とは、38年の時を経て時代背景も代わり、趣を異にしてはいるが、そのスピリッツはうまく受け継がれているリメイクと言っていいだろう。ゴールデンウィークには旧作の一挙放送もあるそうなので楽しみにしたい。