初夏の夜の怪奇三昧

 先月NHK−BSハイビジョンで放映した「怪奇大作戦セカンドファイル」が、BS2で3夜連続で再放送されている。さらに、「セカンドファイル」のすぐあとで、旧作「怪奇大作戦」を3本ずつ、傑作選として放映されている(4日目は旧作だけ5本放映)。
 「セカンドファイル」と旧作、どちらが優れているかを語りたくなる気持ちになりがちだが、それをやるのは野暮というほかあるまい。30数年前といまとでは時代背景が違うし、視聴者の世界観も違う。かたやフィルム撮り、かたやハイビジョン制作、最新放送技術で作った方のがきれいなのは当たり前だが、フィルム撮りの重厚感は、ハイビジョンではなしえない技だと思うし、それが怪奇大作戦たる毒々しさを演出している。一方、カラー映像の中で微妙なセピア色など多彩な表現ができるのはハイビジョンならではであり、新作はそれが美しく表現されていたと思う。
 そんな両者の違いを認めつつ、久しぶりに見た旧作について。第2夜の1作目「京都買います」は何度見てもすばらしい。特にラスト3分の、京都の町を徘徊しているうちに、ほのかに好いていた女性の尼になった姿に出会い、ふと見返すと仏像になっていたというシーン。実相寺昭雄佐々木守コンビの最高傑作といえるだろう。そのシーンに続くエンディングで、京都の町を、現代の象徴である新幹線が走り抜けていくカットがあったが、その新幹線も、古き良き時代の0系というのが、39年たった今、かえって興味深かった。
 それにしても、こんな毒々しいドラマを、夕方7時という浅い時間(この辺の感覚も今とはだいぶ違うわけだが)に、子供向けに放映していたとは、ある意味うらやましい時代だったと思う。