山手線上のアリアに聴きほれる

 今年も6月恒例?の日本トンデモ本大賞が執り行われた。今年は会場も、熱い臭いと悪評高かった千代田区公会堂から内幸町のイイノホールに変わった。イイノホールというと、4年前まで仕事場だった市政会館日比谷公会堂)と目の前鼻の先。久々に来てみたが特に変化はない様子。行きつけだったイイノビル1階のラーメン屋「よかろう」で担々麺を食べ、準備万端、いざ7階の会場へ。
 なんと今回は前売り分だけでソルドアウト!まさに世の中はトンデモへとなびきつつあるらしい。開演前の物販コーナーも黒山の人だかり。場内には今回のスペシャルゲスト・杉ちゃん&哲平の曲(魔法少女系アニメの曲が目立つ)が流れる。
 オープニングの怪しいビデオに続いて、と学会の例会の様子を紹介する「と学会エクストラ」。まずは観客を巻き込んでの「すごい水」の試飲会。4年前に波動を浴びたすごい水を飲むというものだが、(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル。続いてトンデモコミックの紹介、中国版アニソンCDにおける日本語誤植などの小ネタ、開田裕治・あや夫妻の社会科見学ツアー(エヴァオタはどこにでもいるらしい)など。
 短い休憩を挟んでいよいよ大賞ノミネート作品の紹介。山本弘会長の服装は今年も相変わらず。
広重の暗号(ヒロシゲ・コード)―東海道五十三次の謎 まず1作目は、「ヒロシゲ・コード 広重の暗号」。「ダヴィンチ・コード」に関する便乗本、トンデモ本の類はあまたあるわけだが(「ダヴィンチ・コード」自体がトンデモ本という見方もあるが)、和製ダヴィンチ=安藤広重という訳か?一見パロディのようだが、筆者は至ってまじめらしい。で、内容はというと、広重の「東海道五十三次」の絵には未来の出来事の予言が隠されている、というもの。
誰も知らない「本当の宇宙」―ビッグバンは誤りだった。月は地球の母だった。 2作目は、「誰も知らない『本当の宇宙』」。ビッグバンなんてなかった、地球は月から生まれた、万有引力などない、という典型的なトンデモ本。まあ出元がたま出版ですから・・・。
地球23.4度の回転引力衝突時間―天気は潮によって並んでいた/災害は潮の変わり目にやってくる 3作目、「地球23.4度の回転引力衝突時間」。もう、タイトルを見ただけで・・・。中華鍋でキャベツを炒めるときの法則が此の世に怒る有りと有らゆる事件の発生に当てはまると説く、何とも安上がりなトンデモ。
日本型ヒーローが世界を救う! 4作目は「日本型ヒーローが世界を救う」。日本のアニメ・特撮ヒーローものは優れていると褒め称える一方、米国のコミック・アニメはけしからんと叩く評論。ただ、アメコミに関する知識が非常に偏っているため、突っ込みどころが満載。山本会長得意のポストイットがものすごい数貼られていたのが印象的だった。
[rakuten:book:11566078:image:small] そして最後の作品、「人類の黙示録」。まずこの著者、枡谷猛氏の経歴がすばらしい。「漫画家、チリ紙交換業、科学者、トレジャーハンター」。こんな名乗り方をする人もそうそういない。書の内容は、日本の歴史上の出来事と同じようなことが、将来世界規模で繰り返されるという預言書。北米大陸は北海道に、ユーラシア大陸は本州に、オーストラリアは四国に、アフリカ大陸は九州に取って代わり(そして南米はなぜか台湾に)、各地に日本の歴史上の人物のような政治家、軍人が現れて、源平合戦のような怒ったり、戦国時代のようなことになったりするだっろうという。書いているだけで訳がわからないが、見方によってはSFやライトノベルの原案に使えそうな中身だったりもする。
 さらに番外編として、アニメ・特撮などに登場する架空の言語を集めた辞典と、トンデモ本の世界を熟知している人間が作ったと思われる萌え系ソングを特別賞として紹介。
特にこの萌え系ソング「ギリギリ科学少女ふぉるしぃ」が見事!と学会テイストをふんだんに盛り込んだ歌詞は秀逸の一言。作者は間違いなく“お仲間”であろう。



 候補作品紹介が終わり、観客の投票、集計へと移る間、スペシャルゲスト・杉ちゃん&哲平のお二人が登場。出し物は題して「トンデモクラシックミュージック」。バイオリンとピアノのアンサンブルで、ベートーベンやシューベルトなどのクラシックとアニソンやCMソングを融合させた冗談ミュージック。以前、と学会主要メンバーである唐沢俊一御大のラジオに出演したのを聞いていっぺんにはまった、知る人ぞ知る逸材である。

電クラ

電クラ

 二人とも筋金入りのオタクらしく、観客のツボをよく心得た出し物から次々と。アキバに行くとやたら耳にするソフマップの歌を織り交ぜたものとか、京浜急行の改札の音からVVVFの作動音までをバイオリンで再現。パトカーの音もただのピーポーピーポーだけでもなく細かくならせ分ける懲りよう。とりわけ見事だったのが、「G線上のアリア」ならぬ「山手線上のアリア」。「G線上の〜」に、山手線の各駅の発車ベル(高田馬場の「鉄腕アトム」、恵比寿の「第三の男」も当然含む)を織り交ぜて完全再現して1周する(鶯谷から大塚までは全部同じメロディだったりするが)という大作。もう、笑いを通り過ぎて感動してしまった。

 その感動さめやらぬ中、大賞の発表。大賞は最後に紹介された「人類の黙示録」だった。去年と違い、濃い作品がそろったが、やはりこの本の内容は強烈。なるべくしてなった大賞といえよう(私もこれに入れた)。