電車男に始まり電車男に終わる1年

 初詣へは毎年、紅白歌合戦が終わると同時に家を出て地元浦和の調神社(「つきのみやじんじゃ」と読む)か浅草寺に行くのが恒例なのだが、2005年は家の事情でどこにも行かずに新年を迎えた。その年越しの時間、何をしていたかというと、「電車男」を黙々と読みつつ泣き笑っていた。まさに「電車男」に始まった2005年だったのである。
 その「電車男」、残念ながら2chでのリアルの展開は全く知らず(ほかの板には毎日入り浸っているのだが)、単行本からエントリーした。その後、映画も見、ドラマも欠かさず見て、ついにドラマのDVDボックスまで買ってしまった。というわけで、クリスマスがらみのこの土日、一気に観てしまった。
 NHKの朝の連ドラと大河ドラマ以外、たいして普通のドラマは見ないのだが(CSでは昔のドラマを見まくっているのだが)、「電車男」に限ってはどっぷりはまりきった。それは、主人公がオタクという、身につまされる設定だったのがなんといっても大きい。渋谷や六本木などと違い、主な舞台が自分の庭の如く隅々まで把握できている“聖地”秋葉原であり、オープニングのアニメがどう見ても20年以上前に観たダイコンのパクリ(制作がGONZOだし)であり、所々に出てくるアニメネタのパロディなも見事にわかってしまうなど、オタク心をくすぐる要素が絶妙に盛り込まれていたのがよかったと思う。
 当初は元ネタや映画とはだいぶかけ離れた展開に違和感を覚えたものだが、ドラマオリジナルのアニメキャラを登場させたり、コミケメイド喫茶といった「対オタク兵器」を次々に投入していくことで、単なる焼き直しではない、全く新しい「電車男ワールド」を確立することに成功したといえよう。
 ただ、このヒットのおかげで“聖地・アキバ”がオタク以外の層にまで認知され、下手に洗練されつつある現状には、古き良き秋葉原を愛する我々として嘆かわしくもある。