世界征服は難しい

 2カ月ぶりに新宿・ロフトプラスワンに行った。今回のイベント、前回と同じ、“あの”岡田斗司夫氏である。当ブログに(が?)一大旋風を巻き起こした「オタク・イズ・デッド」とは打って変わって、というかそんなことは丸でなかったかのように、今回はある意味ナンセンスな内容。題して「夏休み自由研究・世界征服しよう」。過去映画や特撮ヒーローものやアニメにおいて描かれた、秘密結社や独裁者らによる世界征服の野望が、なぜことごとく失敗に終わったのか、どうすれば世界は征服できるのかと行ったことを、やけにまじめに考えるという、岡田氏得意のの独演会だ。
 特にメモなどもとっていなかったので細かいところは省くが、結論的なことからいうと、世界を征服するだけなら何とかなるかも知れないが、それを維持するのは至難の業であるということだ。
 例えば、ナチスヒトラーのような独裁者となって世界を支配しようとすると、独裁者自らやらなければならないことがあまりにも多い。軍隊を管理し、国民に忠誠を誓わせ、食糧やエネルギーを確保し、歯向かうものを罰し、立ちはだかる強敵(仮面ライダーとかゴレンジャーとかレインボーマンとか、ナチスなら連合軍か)と戦い勝利を得る。これらのことをすべて独裁者自らの手でやらねばならないのである。これではライダーキックで倒される前に過労死してしまう。岡田氏は、そうした独裁者の例として、アニメ「バビル2世」に出てくるヨミの名を挙げていた。
 つまり、ショッカーが仮に仮面ライダーを倒し、晴れて世界征服に成功したとしても、その先に待っているのは新たな地獄しかないのだ。
 スピーチの中で岡田氏は、毎週毎週一人ずつ怪人を出すより、まとめて登場させて仮面ライダーの目の届かない世界各地に送り込めば世界征服などわけないといっていたが(そして見ている子供の誰もが気付く疑問なわけだが)、話全体を聞いてふと思った。というか妄想した。頭のいいショッカーの大首領のこと、世界征服のあとにやってくる悪夢にはすでに気がついてしまっているのである。さりとてお山の大将のの地位は維持したい。そこで、「仮面ライダー」という最強の改造人間を自らの手で生み出し、それをあえて自分に歯向かう者として置いておき、ライダーより決して強くない部下たちに「ライダーを倒せ」という目的を与えて、一人ずつ小出しにして対峙させ、勝てそうなぎりぎりなところまでがんばらせることで、構成員らの士気を維持し、組織を長生きさせつつも、決して「最終目標」として掲げた世界征服を達成させないという、壮大な自作自演装置を作り上げようとしたのが大首領の真の目的だったのだ。しかし、仮面ライダーがあまりに強すぎ、しかも諸般の事情で2人も作ってしまったことが、大首領の誤算だった。これが、特撮ヒーローものの金字塔「仮面ライダー」の物語の真実である。

 妄想は妄想として、こんなロジックに基づいた悪の組織って、作れませんかねえ。