ウルトラの星が見えた夕晴れ

 実相寺昭雄監督の追悼の意味を込めて読んでみた。
 ウルトラシリーズを制作している円谷プロが世田谷区・砧にある都合から、東京といっても、特に言及が多いのは世田谷、川崎、多摩川沿いのあたりで、埼玉出身で足立区在住の私にとってはどうにも身近さは伝わりにくい。それでも、実相寺氏自らの作品解説と当時のエピソードを読んでいくうちに、かつてブラウン管に映し出された光景がしっかり思い出される。
 撮影のために夕時の「ばかっ晴れ」を待ち続けるエピソードなどを読むと、子供の頃に見た夕立上がりの晴れ空に浮かび上がった虹の映像がふと浮かび上がってきた。そして、まだ見晴らしがよかった浦和の夕焼け空の彼方に見えた宵の明星を見つけて、友だちと「あれウルトラの星じゃん」などとはしゃいだ日を懐かしく思い出した。
 そして、文章の節々に、今度はあれを撮りたい、あの作品をこうしてみたいという実相寺氏の意欲を感じ取るに付け、天命を恨む気分になる。